第9回 SPSS研究奨励賞 審査委員会による審査の結果、受賞論文5本、ポスターセッション参加論文11本が決定しました。
| 審査委員会 | |
| ● 審査委員長 | 江原 淳 氏 [専修大学 ネットワーク情報学部 教授] |
| ● 審査委員 | 岩崎 学 氏 [成蹊大学 理工学部 教授] |
| 雄山 真弓氏 [関西学院大学 文学部 名誉教授] | |
| 清水 聰氏 [慶應義塾大学 商学部 教授] | |
| 豊田 秀樹氏 [早稲田大学 文学学術院 教授] | |
| 宮首 賢治 氏 [インテージ 取締役] | |
| (氏名五十音順) |
審査委員長からの総評
本年度もたくさんの応募があったが、少しずつではあるが年々よい論文が増えてきたことがうれしい。審査では学会誌に準じた9項目で評価しているが、やはり論文はIMRAD(導入、資料・方法、結果と考察の頭文字)になっていると貢献が分かりやすい。受賞した論文は、どれも徹底したレビューによる仮説設定・適切なデータと分析手法・その結果としての各領域での貢献という点で見るべきものがある。最優秀論文が学部3年生というのも初めてである。SPSSのツールを活用すれば3年次でも院生以上の論文が書けることが示されたように思う。
SPSS研究奨励賞 審査委員長
専修大学 ネットワーク情報学部 教授 江原 淳
受賞論文
※PDFファイルの再配布は禁じます。
※PDFファイルは審査用の論文であり、ポスターセッションで展示されたものとは異なります。
| 最優秀賞 | 賞金15万円+副賞 |
無料サンプルと消費者の選択行動 〜無料サンプルの消費者購買意思決定プロセスへの影響〜
中央大学 商学部 経営学科
石橋暢也、増山絵里、中村智
【要旨】
本論は、無料サンプルの配布が消費者の購買意思決定プロセスにいかに影響を与えるかという疑問を解明するものである。理論的基盤として行動意図モデルとHowardの消費者意思決定モデル、Mitchellモデルを検討・統合し、知覚リスク概念を加えた新モデルを構築した。更に、研究チームと製造業者で共同作成したリーフレットを添付して市販製品のサンプルを配布し、アンケート調査をもとに共分散構造分析を行い、モデルの経験的妥当性を吟味した。
【受賞理由】
本論は、文献レビューをしっかり行ったうえで、その問題点を示し、新たなモデルを提示した上で、実際のデータで確かめ示唆を与えるという、論文としてのオーソドックスな形を遵守し、かつ適切なデータを適切な分析手法で説いた、非常にレベルの高い論文である。仮説検証型研究の基本をすべて兼ね備えており、学部生でこれだけ出来るのは正直驚かされる。最優秀にふさわしい論文といえよう。
| 優秀賞(院生) | 賞金10万円+副賞 |
アパレルにおけるテキスタイルバリエーション展開の可能性 〜品揃えによる嗜好変化〜
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 デザイン経営工学専攻
山本将介
【要旨】
アパレルにおけるバリエーション展開といえば、カラーバリエーションを想像される方が多いのではないだろうか。近年では、新たなバリエーション展開のひとつとして、テキスタイルバリエーション展開が見受けられる。本研究においては、このテキスタイルバリエーション展開の販売戦略に有益な示唆を与えることを目的とし、品揃え(バリエーションの組み合わせ)による嗜好変化に関する研究を行った。
【受賞理由】
本研究は、テキスタイルバリエーションにおける文脈効果としての「魅力効果」および「妥協効果」の存在の有無を実際の調査により検証しようとするものであるが、それらの効果の存在は残念ながら見出せなかった。その意味では失敗であるが「見事な失敗」である。先行研究のレビュー、作業仮説の構築、仮説検証のための入念な準備とデータ取得、ならびにそのデータの適切な分析、と研究の流れに間然する所がない。仮説が立証されていればさらに評価は高かったであろう。今後の研究につながる大きな足がかりである。
【受賞のコメント】
この度は優秀賞という評価を頂けたこと、大変光栄に思っております。審査委員の先生方、SPSS研究奨励賞関係者の皆様に心より感謝申し上げます。本研究に取組むにあたっては、指導教員である坂本和子先生をはじめ、研究室の仲間には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。今回の受賞を励みにこれからも研究活動に取り組んでいきたいと思います。次こそは、有益な知見を導出できるように頑張ります。
| 優秀賞(学部生) | 賞金10万円+副賞 |
向上心衰退のメカニズム 〜不安に苛まれる学生たち〜
青山学院大学 国際政治経済学部 国際経済学科
東郷佑紀、袖田絵里子、白戸マーガレット千尋、明翫香、泉絵里子
佐野瑠璃子、近藤悠、土屋愛美、武蔵由香、河野裕子
【要旨】
昨今、日本人の労働に対する向上心が低下している。それは、政治不信や経済不況などの社会の不確実性によって、個人の不安が高められたことが原因ではないかと考えた。そこで、実際に学生を対象に不安と向上心の関係についてアンケート調査を行った。その結果、不安が職業選択に対する価値観を介して向上心に影響を与えることがわかった。また、不安軽減のためには個人の主体性や仲間からのサポート体制の必要性が明らかになった。
【受賞理由】
本論文は、日本人の労働に対する向上心の低下の原因として、社会の不確実性によって、個人の不安が高められたことを想定し、共分散構造分析より、その仮説の一部を検証したものである。(1)日本社会が現在直面している問題を取り上げ、(2)先行する心理モデルを踏まえ、(3)共分散構造分析を適切に応用している点を鑑み、優秀賞に値するレベルに達した論文と判断した。
【受賞のコメント】
このような素晴らしい賞をいただき、ゼミ生一同感激しております。調査から論文作成まで長きにわたりご指導いただいた大野昭彦教授、論文作成に際し、貴重なアドバイスをしてくださった大野ゼミOB・OGの方々、そして調査にご協力いただいた学生の皆様に心から謝意を表明いたします。
| INTAGE 賞 | 賞金5万円+副賞 |
ラウンドロビン法が集団問題解決に及ぼす効果 〜隠れたプロフィール課題を用いて〜
山口県立大学 生活科学部 生活環境学科
藤井香衣
【要旨】
「三人寄れば文殊の知恵」という諺があることからも分かるように、我々は『集団は個人よりも優れた決定を行うことができる』と期待しているが、必ずしもそうとは限らない。本研究では隠れたプロフィール型課題を用い、ブレーンストーミングの一つであるラウンドロビン技法を用いて集団問題解決に及ぼす効果を検討した。結果、平等な参加を促すことで集団のパフォーマンスは向上し、集団の問題解決に肯定的効果があると認められた。
【受賞理由】
裁判員制度スタートの年でもあり、今まさに旬なテーマ。真実に到達するための有効なる「話し合い技法」はあるのか。当レポートでは、メンバーが順番の発言機会を与えられるという「ラウンドロビン方式」に着目し、その効果検証を模擬裁判実験によって行っている。比較的規模の大きな実験がなされており、また実験方法も適切に設計されている。故にラウンドロビン方式の有効性認定という結論への納得度も高い。社会的にも今後ますます注目を浴びてゆく研究ではないだろうか。
【受賞のコメント】
この度はINATGE賞という栄誉ある賞を頂き、大変光栄に感じております。指導教員である甲原定房先生をはじめ、SPSS Directions Japan関係者の皆様、研究に協力してくださった皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。今回頂いた貴重なご意見を活かして、これからも研究活動に取り組んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。
| SPSS 賞 | 賞金5万円+副賞 |
化粧品に対する興味・意識に対する調査
福岡大学 商学部 商学科
岩本紗季、高橋昭平、萩原将臣、古庄妃香里、宮崎貴誠行、矢野祥子
【要旨】
近年、女性が化粧を始める年齢の若年齢化が進んでいるように思われる。これは、思春期に入り、「異性を意識して外見を気にするようになった上での行動といえるだろう」というのが私たちの見解である。そこで男女別に化粧品に対するアンケートを行い、化粧を行う要因や対象者の深層心理や使用の真の理由などを研究事例を参考にしたモチベーションリサーチを用いて引き出した。
【受賞理由】
若年層の化粧品に対する興味・意識に関しての研究で、大学生を対象にして、化粧品を使い始める理由やきっかけを調査し、使用化粧品の種類などについて105名を対象に調査している。また女性が化粧した場合や小学生の化粧をしていることに気づいた時の感想などを、噴出し絵を使って記述させ、それを、テキストマイニング手法を用いて分析した手法はユニークである。若者の化粧に対する考え方や男女の考え方の差がみられ、化粧品メーカや整髪料のメーカの参考になる報告である。
【受賞のコメント】
この度は、SPSS賞という素晴らしい賞を頂き、大変光栄に感じております。この賞を通して、普通の学生生活では得ることの出来ない多くの貴重な経験をさせていただきました。受賞につきましては、ご指導頂いた太宰潮先生、調査に協力していただいた皆様、そして有益なアドバイスをくれた同ゼミ生に心からの感謝を申し上げます。この結果に奢ることなく、改善点も含め今後の研究に活かし、より一層精進していけたらと思います。
ポスターセッション 展示論文
SPSSユーザー会「SPSS Directions Japan」でのポスターセッション展示に選ばれた論文です。この中から、SPSS Directions Japan 当日の来場者の投票によって、【SPSS Directions 参加者特別賞(賞金5万円)】が決まります。
SPSS Directions Japan については、こちら をご覧ください。
| 1 | 学級担任への支援の取り組みと教職員集団の組織風土が特別支援教育の推進に及ぼす影響 |
広島大学大学院 教育学研究科
米沢崇、田中陽子
本研究では,支援を必要とする児童がクラスに在籍する学級担任への支援の取り組みと教職員集団の組織風土が特別支援教育の推進に及ぼす影響について検討した。その結果,特別支援教育を円滑に推進していくためには,支援を必要とする児童にとって主たる支援者となる学級担任への支援の取り組みを行うことが重要であり,校長を含む教職員集団の組織風土も,特別支援教育の推進を支えるものとして不可欠であることを明らかにした。
| 2 | 小売店頭販促活動をめぐる製造業者〜小売業者間の協力関係 |
中央大学 商学部 経営学科
高嶋克樹、中川陽平、武井俊也
本論の目的は、店頭販促活動における製造業者に対する小売業者の店頭販促活動への協力行動について、Morgan and Hunt (1994) のKMVモデルに経済的満足を加えることで新モデルを構築し、製造業者が小売業者の店頭販促活動協力を引き出すメカニズムを解明することである。分析にあたっては、小売業者に対して行った質問票調査で得られたデータを用いてモデルに共分散構造分析を施し、モデルの経験的妥当性を吟味した。
| 3 | 地域別にみた後期高齢者における身体的・社会的・精神的活動における構造分析 |
首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 都市システム科学域
井上直子
後期高齢者の「生活機能低下の要因」と「介護予防事業の対象者出現率、参加意識」を明らかにするため、「身体的・精神的・社会的」活動状況の相互関連性を分析した。A市の75歳と80歳から84歳の1,650人の郵送調査の回答者を対象とし、共分散構造分析を行った。潜在変数「身体的健康度」を規定とする「社会的健康度」と「精神的健康度」の相互の関連性について分析し、「身体的健康度」は「精神的健康度」から直接に規定されるとともに、「社会的健康度」を経由するパス図を高い適合度で得た。(AGF=0.879, GFI=0.926,NFI=0.798,RMSEA=0.036 )
| 4 | 学内エコバッグ推進活動のための調査分析とその表現方法に関する研究 |
徳島文理大学 人間生活学部 メディアデザイン学科
谷銀河、吉田有佳里、栗本絵理香
意識調査等の調査結果をわかりやすくフィードバックすることを目指し、私たちは今回の研究でオリジナルのキャラクターグラフを考案した。調査内容の事例として以前から活動に携わっていたエコバッグの取り組みを用いた。その結果、誰でも視覚的に捉えやすいグラフが出来上がった。また、実際にニーズのあったエコバッグについても絵グラフで表現した。私たちはこの新しいグラフ表現方法を多様な場面で活用したいと考えている。
| 5 | CGM サイト内における情報発信のメカニズムの多角的解明 |
東京理科大学 経営学部 経営学科
笹部峻市、小穴貴弘
本稿では消費者がインターネットで情報を検索・購買・発信して情報を共有するメカニズム多角的な分析を用いて明らかにする。
分析手法は共分散構造分析で仮説を検証し, データマイニング手法を活用して、情報発信に関するルールを算出した. それらの分析の結果、情報発信の特徴は (1) 商品情報の検索 (2) 商品購入失敗経験 (3) 分析的思考者で、 (1) (2) (3) 全てに該当する消費者はネガティブな情報を発信しやすくなるという特徴があった。
| 6 | 若年者における歯周病罹患に影響を与える因子の性差の検討 |
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 予防歯科学分野
古田美智子
若年者における歯周病罹患に影響を与える因子の相互関係について男女別にモデル化し、モデルの性差を比較した。対象者は、18、19歳で非喫煙者の大学生806名(男性416名、女性390名)で、歯科健診と質問表調査を行った。結果として、男女間でモデルに異質性が認められ、歯周病罹患に影響を与える因子の関係には性差がみられた。よって、歯周病を予防するために、男女で異なったアプローチをしたほうがよいと考えられる。
| 7 | POP広告がカテゴリー内のブランド間競争に及ぼす影響 〜POSデータによる訴求タイプ別のプロモーション効果比較〜 |
中央大学 商学部 経営学科
白石秀壽、新井佑弥、森田美沙代
本論の目的は、POPの訴求タイプの違いがブランド間競争に異なる効果を及ぼすことを、POSデータを用いて分析することである。本論では、企業と共同でオリジナルのPOPを作成し、店舗実験を行った。モデル化にあたって、交差プロモーション・リフトという指標を提案した。分析の結果、価格訴求型POPはカテゴリー内でカニバリゼーションをもたらすとともに、テーマ訴求型POPは他ブランドに販売促進効果をもたらすことが見出された。
| 8 | 異性用商品の購買における意思決定プロセスに関する研究 〜店舗内購買行動の包括的モデルを用いて〜 |
明治大学 商学部
高坂祐多、内田圭祐、川崎まどか、國竹修平、小池明子、鈴木友美、寺西理沙、堀部陽子
本研究では、異性用商品の購買意思決定プロセスを解明する。「店舗内購買行動の包括的モデル」の店舗内意思決定過程に焦点を当て、買物状況要因と店舗内状況要因から異性用商品の購買において重要となるであろう要因を用い、独自の概念枠組みの中で研究を進めた。 質問紙法によって集められたデータを用いて、t検定、因子分析、重回帰分析により仮説の検証を行った結果、性差、経験、同伴者の有無による違いが明らかになった。
| 9 | SPSS Directions 参加者特別賞 ユニクロの服に対する人の価値観の違い 〜ユニクロの服で初デートはいけるのか??〜 |
福岡大学 商学部 商学科
梶原大雅、東怜一朗、山本達哉、中尾和也、中野鮎美、岡亜矢可
2004年にユニクロは、消費者の一定水準ニーズに応える品質とデザイン性、そして低価格の3点を備えた商品開発をし、イメージアップを行った。
その結果ユニクロの商品に対する人々の意識が変わってきていると言われている。その中でユニクロの服に対する人々の価値観の違いについて「ユニクロの服で初デートはいけるのか?」に沿ってアンケート調査を行い、ユニクロの商品だとばれても大丈夫な商品を調べていく。
【受賞のコメント】
今回は、招待頂きまして誠にありがとうございました。また、参加者特別賞をいただき、大変光栄に思っています。
今回参加させていただいて、企業の方と多々接することができ、大変貴重な経験をさせていただくことができました。私たちは三年生なので、この経験を就職活動や就職後の仕事に活かしていきたいと思っております。
| 10 | EFA・SEM の予測モデルとしての評価 |
東京工業大学 社会理工学研究科 社会工学専攻
小橋洋平
探索的因子分析や構造方程式モデリングは、記述力の高い統計手法として評価されている一方で、モデルの未知のデータに対する予測力はこれまで言及されてこなかった。そこで、本稿では、これらの統計手法の予測力をシミュレーションによって実験的に評価する試みを行った。その結果、適合度指標を用いた探索的なモデル選択により、複雑なモデルに対してもある程度の予測力をもったモデルを得ることが可能であることが分かった。
| 11 | 中・高校生の楽しい学校生活を規定する要因 〜生活習慣と喫煙・飲酒経験との関連〜 |
首都大学東京 都市環境科学研究科 都市システム科学専攻
中山 直子
本研究の目的は、中・高校生の楽しい学校生活と、生活習慣および喫煙・飲酒経験との関連について明らかにすることである。共分散構造分析を用いて分析した結果、『楽しい学校生活』(『 』は潜在変数を示す)は、楽しい家庭生活、朝食摂取、主食と副菜がそろっていることや生活習慣が身についているとことと関連する『生活習慣』から直接的に規定されていることが明らかになった。年代別・性別で分析した結果、『飲酒・喫煙経験』から『生活習慣』については、高校生男子よりも中学生男子の方が有意に関連していることが明らかになった。
性別・世代別に多母集団同時分析を行った結果、このモデルでの適合度は、AGFI=0.981、GFI=0.989、RMSEA=0.017であり、決定係数は、中学生男子で71%、中学生女子で47%、高校生男子で53%、高校生女子で57%であった。
※掲載論文について※
応募論文の著作権は応募者に帰属します。応募論文の利用データ等については、データ提供元、共同研究者、指導教員などに応募者がすべて使用許可を得た上で応募したものとみなします。なお応募論文の内容の取り扱いについて生じた問題について、当社は一切の責任を負わないものとします。


【受賞のコメント】
この度は、我々久保研究室が昨年に続き最優秀賞という評価を頂いたことを大変光栄に思っております。
まず、審査委員の皆様、関係者の皆様に心より御礼申し上げたいと思います。また、論文執筆の経験が無い私たちに最後まで熱心にご指導くださった久保知一先生、並びに研究の機会を提供して下さった大塚製薬の皆様、研究に協力して下さったすべての方々に感謝いたします。今回の受賞を糧に今後の研究活動に邁進していきたいと思っております。ありがとうございました。